残業は何時間からキツイと感じる?残業時間の平均や法規制について解説
2025/5/19 更新
平均的な残業時間はどれぐらい?
会社で働いている人の多くが経験する「残業」。なかには「残業が多くてキツイ……これって普通なの? もしかしてブラック?」と感じている人もいるのではないでしょうか。
まずは、厚生労働省が発表した調査資料から、残業時間(所定外労働時間)の平均を雇用形態別・業種別に見ていきましょう。
雇用形態別の残業時間の平均
厚生労働省の「毎月勤労統計調査(令和6年分)」によると、一般労働者(常用雇用)・パートタイム労働者の平均残業時間(1ヵ月あたり)は以下の通りです。
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●全業種の一般労働者の平均残業時間……13.5時間/月
●全業種のパートタイム労働者の平均残業時間……2.3時間/月
●全業種・全労働者の平均残業時間……10.0時間/月
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残業時間が多い業種・少ない業種
同調査で、一般労働者の平均残業時間を業種別に見ると、最も残業時間が多いのが「運送業、郵便業」で24.7時間/月、次いで「電気・ガス業」の16.6時間/月、次いで「情報通信業」の16.5時間/月となっています。
逆に、最も残業時間が少ない業種は「医療・福祉」で6.8時間/月、次いで「複合サービス事業」の9.6時間/月、次いで「生活関連サービス等」の10.3時間/月となっています。
パートタイム労働者では、最も残業時間が多いのが「運送業、郵便業」で5.6時間/月、次いで「複合サービス事業」の5.3時間/月、次いで「製造業」の5.1時間/月となっており、どの業種においても一般労働者と比べて残業時間はかなり少なくなっています。
違法になる残業時間は?
では次に、残業時間に関する法的な規制・ルールについて解説します。
残業時間の法的な上限規制・ルール
以前は、残業時間の上限に関する法的な規制はありませんでしたが、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」により、「時間外労働の上限規制」が明確に定められました。
労働基準法では、原則として「法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて労働させてはいけない」「休日は週1日(または4週間で4日以上)設けること」と定めています。これを超える場合、時間外労働の上限規制に従って「36協定(労働基準法36条に基づく労使協定 ※下記コラム参照)」を締結する必要があります。時間外労働の上限規制のポイントは以下の通りです。
●時間外労働(休日労働は含まない)の上限は、原則として「月45時間・年360時間」とし、臨時的・特別な事情がない限りこれを超えてはいけない
●臨時的・特別な事情があり、労使が合意する場合でも、以下の範囲内としなければいけない
◎時間外労働は「年720時間以内」とする
◎時間外労働+休日労働は「月100時間未満」、「2~6ヵ月平均80時間以内」とする
◎原則である月45時間を超えることができるのは、「年間で6ヵ月まで」とする
また、労使協定を締結していないのに、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働(=残業)をさせた場合や、労使協定の締結内容を超える労働をさせた場合は違法となり、企業側に6ヵ月以内の懲役、または30万円以下の罰金が科されます。
【コラム】36協定とは
労働基準法36条に基づき、時間外労働や休日労働の適正を図ることを目的として締結する労使協定のこと。従業員を法定労働時間を超えて働かせる場合や休日に働かせる場合、企業と労働組合(従業員代表)の間で、時間外労働や休日労働の範囲・上限時間などの取り決めを行い、締結内容を所轄の労働基準監督署に届け出ることが義務づけられています。
36協定において時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」が大原則となりますが、繁忙期や緊急的な事情で通常より業務量が増える場合、特別条項付きの協定を締結することで、この上限を超える労働が認められます。
残業キツイと感じるのは何時間から?
では、残業時間がどれぐらいになると、心身や日常生活に無理が生じてくるのでしょうか。ここからは、1ヵ月あたりの残業時間別に、どのような生活パターンになるのか、下記のモデルケースを想定して具体的に見ていきましょう。
【モデルケース】
勤務時間9時~18時(休憩1時間)、1ヵ月の勤務日数20日、自宅からの通勤時間1時間、毎日コンスタントに残業が発生
1ヵ月の残業時間が10時間の場合
1日の残業時間は30分程度となります。まっすぐ帰って自宅着は19時30分、食事や入浴を済ませると21時30分ごろになるでしょう。その後、2時間ほど自由に過ごして23~24時に就寝。帰宅後の自由時間や適切な睡眠時間(7~8時間)も確保しやすく、残業による生活への影響は少ないといえるでしょう。
1ヵ月の残業時間が20時間の場合
1日の残業時間は1時間程度となります。まっすぐ帰って自宅着は20時、食事や入浴を済ませると22時ごろになるでしょう。その後、1時間ほど自由に過ごして23~24時に就寝。就寝までの自由時間はやや少なくなりますが、適切な睡眠時間は比較的確保しやすいでしょう。
1ヵ月の残業時間が30時間の場合
1日の残業時間は1時間30分程度となります。まっすぐ帰って自宅着は20時30分、食事や入浴を済ませると22時30分ごろになるでしょう。その後、就寝までの自由時間はあまり確保できませんが、すぐに就寝すれば適切な睡眠時間は確保できるでしょう。
1ヵ月の残業時間が40時間の場合
1日の残業時間は2時間程度となります。まっすぐ帰って自宅着は21時、食事や入浴を済ませると23時ごろになるため、就寝までの自由時間がほとんど確保できず、睡眠時間も短くなる可能性があります。
1ヵ月の残業時間が50時間以上の場合
1日の残業時間が2時間30分以上となり、まっすぐ帰っても自宅着は21時30分以降となるため、自宅でゆっくり食事や入浴をしたり、自由時間を過ごしたりするのは難しくなるかもしれません。就寝時間も遅くなりがちなので、睡眠時間が十分に確保できず、心身ともにキツイと感じることが多くなるでしょう。
なお、1ヵ月の残業時間が45時間以上になると、法律で定めた原則の上限規制を超えるため、特別条項付きの36協定を締結していない場合は法律違反となります。
残業をできるだけ減らすには?
ここからは、残業を少しでも減らす方法を紹介します。残業が多くて負担を感じている人は、ぜひ参考にしてみてください。
抱えている仕事に優先順位をつける
同じ量の仕事をこなす場合でも、作業する順番によっては無駄な手間がかかったり、効率が悪くなったりして、結果的に残業につながってしまうことがあります。
まず、自分が抱えている仕事をリストアップし、それぞれの業務をいつまでにやればいいのか、どれぐらいの時間がかかるのかを計算して、やるべき作業の優先順位を決めましょう。
優先順位の高い作業から進めることで、仕事の期日に追われにくくなり、あせって残業することが減る可能性があります。
職場のチーム内で協力体制をつくる
チーム単位で仕事をする場合、チーム内のメンバーで協力体制をつくることで、残業を減らせる可能性があります。
たとえば、個々に割り振られた作業が終わらなければ、ほかのメンバーがサポートに入るような体制にします。ただし、個々の業務を皆で共有する必要があるため、各メンバーや会社の同意・理解を得る必要があるでしょう。
上司に相談する、転職を検討する
従業員の能力の問題ではなく、職場の業務過多によって残業が発生しているケースも多々あります。任せられる仕事があまりにも多く、長時間の残業によって心身に支障をきたしている場合は、まず上司や労務・人事担当に相談して、業務量の見直しや配置転換などを願い出てみましょう。
それでも圧倒的に業務量が多く、残業が減る見込みがない場合は、思い切って残業が少ない業種や企業へ転職するのもひとつの方法です。
まとめ 残業が多すぎてつらい場合は転職も検討しよう
今回は、平均的な残業時間や法的なルールとともに、残業時間別に見た生活パターンの例や、残業を減らす方法を紹介しました。
ここ近年、国が進める働き方改革や過労死などの問題を受けて、残業を減らそうという動きは社会的に広まりつつあります。とはいえ、どうしても仕事が終わらず、残業せざるを得ない人や、時間外手当が付くという理由で、キツイ残業を我慢してこなしている人もいるでしょう。
しかし、長時間・慢性的な残業で日常生活に支障をきたし、身体を壊してしまったら元も子もありません。残業が多すぎてつらい、自分のキャパシティを超えている……と限界を感じたときは、残業が少ない会社への転職も検討してみることをおすすめします。
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