設備保全ってそもそも何?

2021/9/8 更新
設備保全という言葉を聞いたことはありますか?実は工場の仕事の中でも重要な仕事の一つであり、近年は今まで以上に注目が高まっている業種です。
AIやIoTなどの技術の進歩により、工場の自動化が進むにつれて、単純作業の労働力は徐々に減っていくと言われています。 一方で、技術や知識が求められる設備保全の仕事に関しては、まだまだ人による判断が必要な場面や、ロボットでは不可能な柔軟な対応が求められます。
自動化の進んだ工場であっても、機械や装置のトラブルは必ず人の手が必要です。
そのため設備保全は今後も需要の高い仕事であると言えます。
今回はそんな設備保全のお仕事についてオススメできるポイントを解説します。
設備保全とはそもそも何?
設備保全とは、工場にあるさまざまな生産設備を問題なく稼働できるように点検し、安全かつ安定的に製品を生産できるよう維持、管理することを指します。
装置の予期せぬトラブルや故障は、品質の低下による不良品の発生や、設備の停止による納期遅れ等の原因となります。
そういった設備による損失を防ぐのが、設備保全の考え方となります。
設備保守やメンテナンスとの違い

「設備保全」と「設備保守やメンテナンス」に大きな違いはありません。
どちらも生産設備が壊れないように、定期的に修理や点検をすることを指します。
ただし、「設備保全」には生産設備が壊れないよう、メーカー自身が「安全を維持できるようにする」ということを目的としており、 「設備保守やメンテナンス」は「生産設備が壊れたら、修理やメンテナンスをする」ということを目的としています。
設備保全の種類や仕事内容について
設備保全については、ご理解いただけたかと思います。実は設備保全にも大きく3つの種類があります。それぞれの言葉の意味と仕事内容について説明します。
1.予防保全

予防保全とは定期的に各種設備の点検や修理、部品交換を行い、設備の故障がないかを確認することを指します。WEBサイトやスマホアプリでもよく聞く、メンテナンスと似た性質があります。予防保全で重要なのはトラブルが発生することのないように、未然にトラブルの元となるような原因を排除することです。
定められたスケジュールを元に予防保全を行うことは、トラブル発生を抑止し、設備やシステムの寿命を延ばすことにもつながります。
2.事後保全

事後保全とは設備や機械に不具合が発生してからおこなう保全活動です。 不具合の原因調査を行い、設備を元通り動くように復旧したりすることを指します。 不具合が起きてしまってからの対応となると、修理する間は設備を動かすことができません。また緊急の修理や復旧には多くのコストがかかることもしばしばで、できれば避けて通りたい活動になります。 しかしどんなに予防をしていても、設備が壊れてしまったり動かなくなったりすることはあります。
修理する際の一番のポイントは「対策をする」ことです。同じ原因で壊れないように対策をすることで工場の生産性を上げることが可能です。
3.予知保全

予知保全とは設備の故障やエラー発生の兆候を検知してから、修理や部品の交換を行うことを指します。予防保全と似ているように感じますが、予防保全は定期的に行い、予知保全は兆候が現れてから対応を行います。
予知保全でもっとも重要なのは「何をもって設備が壊れそうなタイミングであるか?」という兆候を発見することです。一般的には機械や設備の監視システムを導入することで、予防保全よりも効率よく設備保全を行うことが可能になります。
設備保全を実施する目的
設備保全の目的は主として2つあります。「生産コストの効率化」と「働く従業員の安全確保」です。
効率的な生産を保ち、且つ、従業員の安全性を守るのは適切な設備保全を実施することで実現することが可能です。
この2つの目的を細分化すると、以下の通りとなります。
設備の故障を防止する

設備の故障により、長時間の生産停止状態を招くと、生産効率の低下などの生産活動に大きく影響を及ぼします。設備の故障は時には事故も引き起こす場合もあり、従業員の安全も脅かすことになり兼ねません。
設備部品の長寿命化

設備を壊れないように維持することで、異常停止した場合に最小時間での停止により、長い期間稼働できるようにすることもでき、設備の長寿命化にも繋がります。
停止時間を減らす(チョコ停/ドカ停)

工場の設備を停止すると、設備効率を阻害し、生産に大きく影響することで、経済的損失が大きくとなると言われています。
「チョコ停」とは「チョコっと停止」の略で、大きなトラブルに比べると復旧時間が短く、復旧作業は現場の作業者が実施できるケースが多い設備停止のことを指します。
1日に数回以上の頻度で発生し、復帰時間は数分程度というのも大きな特徴です。
ただし、「チョコ停」が顕在化することは、大きなトラブルを引き起こす「ドカ停」の前兆とされており、油断してはいけません。
「ドカ停」とは「ドカっと停止」の略で、名前の通り、トラブル発生から復旧するまでに約1時間以上のトラブルを指し、設備の入れ替えや修理をしないと解決しないこともあり、場合によっては工場経営に影響をする設備停止のことを言います。
「ドカ停」になってしまった場合は、現場の作業者では修理が不可能になる場合もあり、専門の業者を呼び、部品交換や修理と言った作業が発生します。
この「チョコ停」「ドカ停」を引き起こさないためにも「設備保全」を徹底することは工場において、重要な業務の一つとなります。
不良品を削減する

「設備保全」を実施することで、不良品を削減することができます。工場では常に稼働中の生産設備があり、その性能が低下することにより不良品が出てしまうことがあります。
設備保全を怠ると、不良品が生産されていることに気がつかず、生産された製品全てを廃棄することになり、金銭的な面でも大損害になり兼ねません。
このような不良品を生産しないためにも「設備保全」は重要だと言えます。
設備保全は大変?
設備保全の仕事は「仕事が単調」、「きつい」、「難しそう」と言われることがあります。 ここでは、なぜこの様に言われているのか考察してみたいと思います。
仕事が単調
設備保全の仕事は主に、定期点検・修理・メンテナンス作業・不具合の監視など、どの作業も基本的にはマニュアル通り、手順通りに作業を行う必要があるため、仕事が単調と思われる方もいるようです。
一方で、ルーティンワークをコツコツこなすのが好きな方は、やりがいをもって仕事に取り組めるでしょう。
きつい
製造業同様、設備保全の仕事でも交代制勤務が一般的となっており、残業や休日出勤になることがあります。
特に繁忙期や突発的な不具合があった場合など、自分の業務が終わるまで残業を行うケースもあり、時間、体力的にキツイと感じる方もいるでしょう。
難しそう
定期点検やメンテナンスを行う生産設備は年々高度化が進んでおり、設備保全に携わる側も技術進化についていくために専門知識の習得が必要となってきます。専門知識を習得するという点で「難しい」と思う事があるかもしれません。
設備保全が必要な理由や将来性について
工場において、生産設備の故障や不具合は大きな損失となります。 どんなに人気の製品であったとしても、それを生産することができなければ売上には結びつきません。また期待される品質以下の製品を生産してしまえば、逆に消費者や取引先からの信頼を落としてしまうことになりかねません。
そのため「予防保全」、「事後保全」、「予知保全」といった三つの観点から設備がしっかり稼働するように維持する設備保全は、非常に大切な役割を担っています。
昨今AIの飛躍的な進歩によって、今後人間の仕事は徐々に減っていくと言われています。 特に工場での単純作業のような仕事に関しては、より効率性を高めるためロボットに置き換わっていっています。
しかし設備保全の仕事は複雑化、高速化する生産設備システムを安定的に動かすために必要な存在です。 設備の複雑化が進めば進むほど、トラブルが発生する可能性も高くなり、今まで以上に設備保全のスキルを持った人材の需要が高まると予想されます。
設備保全に役に立つ資格

生産設備の複雑化により、専門的な知識、経験をもつ人材は今後も重宝されます。
設備保全の仕事をするにあたって、必ずしも資格が必要というわけではありませんが、
資格を取得することで、知識や経験の裏付けとなるでしょう。
・機械保全技能士
機械保全技能士は国家検定制度による技能検定による資格で、設備保全で必要とされる技能の習得レベルを評価するものです。
特級、1級、2級、3級と段階分けされており、まずは初級技能者の証となる3級を目指すと良いでしょう。3級は実務経験なしでも受験することが可能で、設備保全に必要な基礎知識を学ぶことができます。
・電気工事士
電気工事士はビルや建物などの電気系統の設備保全に求められる資格です。第一種と第二種があります。第二種は600ボルト以下の店舗や一般在宅の工事の仕事が出来るようになり、第一種は第二種に加えて500キロワット以下の工場やビルの工事の仕事が出来るようになります。
・電気主任技術者
電気主任技術者は変電所や発電所、ビルや工場などの受電設備や配線といった電気設備の保安監督の事を言います。国家資格であり第一種~第三種の区分により扱える電圧が異なります。
◆第一種電気主任技術者:すべての事業用電気工作物
◆第二種電気主任技術者:電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
◆第三種電気主任技術者:出力5000キロワット以上の発電所を除く、電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物
設備保全のスキルが身につくと他の工場でも活躍できる

知識や経験を伴った設備保全のスキルは汎用性が高いスキルです。 今まで簡単な設備保全は作業オペレーターが兼任することも多かったですが、近年の複雑化する設備保全は難易度が高く専門性の求められる仕事となりつつあります。
設備保全の経験を積み、スキルを身に着けることで、他の工場へ行ったとしても重宝され、活躍できる人材になれるといえます。
設備保全の平均給与は?
設備保全が出来るようになると仕事の可能性を広げられることがわかりました。しかし、設備保全の平均給与がどのくらいなのかが気になるところです。正社員で年収450万円前後、派遣社員ならば時給1500円前後、アルバイトなら1000円前後が平均とされています。
さらに資格を積極的に取ろうとする方であれば年収700万円以上、場合によっては年収1000万円も目指すことができます。
設備保全に必要なスキル
設備保全の仕事は収入の面から見ても魅力的であることがわかりました。しかし、未経験の方からするとハードルが高く見えるのも事実です。ですが安心してください。未経験からでも設備保全の仕事をすることは可能です。しかも、仕事をしながら資格取得を目指すこともできるので将来的な年収アップも見込めます。
まずは未経験でも挑戦可能な保全求人に応募、もしくは未経験向けに保全研修をやっている企業に応募することから始めましょう。
設備保全に向いている人
下記が挙げられます。どれか一つでも当てはまる方は設備保全の仕事に興味を持つと良いでしょう。
・丁寧な仕事が出来る人
・機械いじり、DIYが好きな人
・些細なことでも気が付きやすい人
・臨機応変に動ける人
・全体の流れ(機械などの)を理解できる人
特に重要なのが丁寧な仕事が出来ることです。設備の点検や修繕などは丁寧にやらないとトラブルの元となる可能性があります。徹底した丁寧な仕事ができることが何よりも優先事項となるのです。
車やバイクいじり、パソコン組立などの機械いじりや、DIYなどの細かい作業が好きなかたも設備保全に向いています。設備保全のお仕事では日常的に機械や工具と向き合うこととなるので適性があると言えます。
また、設備保全は工場などにある設備の稼働率を上げることが仕事です。些細なことに気が付くことで、未然にトラブルを回避することができます。また、トラブルが発生してしまったとしても、その際に臨機応変に動けることも重要です。
俯瞰的な視点で、物事を見ることができる人も適性があります。 設備保全は故障箇所だけでなく、全体から故障の原因を読み取る能力が求められます。 装置がどんな構造であるかを理解し、推察して対応することが重要になります。
設備保全の仕事は未経験でも可能
設備保全と聞くと、「壊れたものを修理する」というイメージから、未経験者には難しく感じてしまうのですが、実は未経験者でもOKな職場が多くあります。
設備保全に力を入れいている企業では設備保全の環境が整っており、また担当者も複数いることから、
先輩社員がマンツ―マンで設備保全業務を教えてくれる企業も少なくありません。
設備保全担当者が一人前になるまでには時間がかかることから、知識と技術スキルを長期的に身につけていきたいという方にはおすすめのお仕事です。
まとめ
設備保全の仕事について解説しました。 工場の設備の番人として生産を支えるのが設備保全です。
設備保全の何よりの魅力は、工場の生産を支えているという達成感が得られることでしょう。目立たないかもしれませんが、安心・安全に設備が使えるようにすることは工場で製品を生産するにあたって非常に重要な役割です。その分だけ収入の面でも優遇されていますので興味が出たら設備保全のお仕事を早速チェックしてみてください。
設備保全は単純作業ではないため難しいと思われるかもしれませんが、やりがいや将来性を考えると魅力的な求人が多いです。
工場の仕事に興味があれば、ぜひ設備保全の仕事にも興味を持っていただきたいと思います。