旋盤工とは?仕事内容や求められるスキル、目指す方法やキャリアパスを解説
2025/9/4 更新
旋盤工とはどんな仕事?
製造業や工場の求人でよく見かける「旋盤工」とは、具体的にどのような仕事なのでしょうか。まずは、旋盤工が携わる「旋盤加工」の基礎知識とともに、その仕事内容を詳しく見ていきましょう。
旋盤加工とは?
旋盤加工とは、旋盤と呼ばれる工作機械を使って金属や木材、プラスチックなどの被作物(削られる素材)を切削し、円型状に加工する技術のこと。回転する土台に被作物を取り付け、リンゴの皮をむくような要領で丸い形に加工していきます。円型の加工部品のほとんどは旋盤で作られており、工業製品のネジやボルト、自動車のホイールなども旋盤加工の技術によって生み出されています。
旋盤工の仕事内容
旋盤工は、旋盤を使って被作物を切削加工し、工業製品のさまざまな部品をつくる技術職です。具体的には、旋盤を操作しながら被作物の内側や外側を刃物工具で切削し、仕様通りの部品に加工していきます。とくに、航空機や自動車、医療・電子機器などに使用される精密部品は、ミクロン単位の精度で仕上げる必要があるため、旋盤工には繊細かつ高度な技術が求められます。
また、後述するNC旋盤(コンピューター内蔵の旋盤)を扱う場合は、コンピューターへの数値入力(プログラミング)、動作の確認や仕上がりチェック、機械のメンテナンスなどが主な業務となります。
旋盤加工とフライス加工の違い
切削加工には、フライス盤という工作機械を使った「フライス加工」と呼ばれる技術もあります。円型加工に適した旋盤に対して、フライス盤は四角や尖った形状への加工に向いています。また、旋盤加工では被作物を回転させて切削しますが、フライス加工は削る側の刃物を回転させて切削するのが特徴です。
被作物を旋盤で加工する際、加工する形状によってはフライス盤を使うこともあるため、旋盤工はフライス加工の技術も身につけておくと役立ちます。
旋盤工が扱う工作機械の種類
旋盤工が扱う工作機械には、大きく分けて「汎用旋盤(汎用方式)」と「NC旋盤(NC方式)」の2タイプがあります。以下、それぞれの旋盤方式の特徴や長所・短所について解説します。
汎用旋盤(汎用方式)
汎用旋盤は、旋盤工が機械を操作・制御しながら、手動で切削加工する方式の旋盤です。旋盤工が一点ずつ手作業で仕上げるため、オーダーメードの特注品や小ロットの製品に対応しやすいのが特徴です。ただし、旋盤工の熟練度によって加工精度にバラつきが出やすく、手間や工程数も多くなるため、同一部品の大量生産には向いていません。
NC旋盤(NC方式)
NC旋盤(Numerical Control/数値制御)は、コンピューター内蔵の機械が自動で切削加工する方式の旋盤です。作業領域の座標軸や切削工具の種類などを指定すれば、連続した同じ作業を自動的に行ってくれるので、旋盤工の熟練度を問わず、高精度の同一部品を大量生産することができます。ただし、設計仕様に沿ったプログラムを事前に作成・入力する必要があり、作業中の細かい調整や仕様変更に対応しにくいのが難点です。
旋盤工に求められるスキル
旋盤工の仕事は、もともと汎用旋盤を使った手作業による切削加工が主流でした。そのため旋盤工には、汎用旋盤を駆使した高度な加工技術とともに、手元の勘といった熟練の職人技が求められました。
しかし、製造現場の自動化・機械化が進む近年、大量生産品についてはNC旋盤が主流となり、熟練技術者の高齢化で汎用旋盤を扱える旋盤工も少なくなっています。そうしたなか、手作業による高度な加工技術よりも、機械のメンテナンスやプログラミングのスキルに長けた旋盤工が活躍する時代になりつつあります。
とはいえ、特殊素材の仕上げや精密部品の試作などにおいては、汎用旋盤を使った加工作業がまだまだ欠かせません。また、汎用旋盤の作業で培った切削加工の知見は、NC旋盤のプログラミングにも大きく役立ちます。よって、NC旋盤を扱う旋盤工として働く場合も、汎用旋盤のスキルがあれば仕事の幅が広がり、転職する際にも大きなアドバンテージとなるでしょう。
旋盤工の年収やキャリアパス、役立つ資格
旋盤工の平均年収はどれぐらい?
厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、旋盤工(金属工作機械作業従事者)の平均給与(月額)は約32万円、平均年間賞与は約82万円。ここから平均年収を算出すると、32万円×12ヵ月+82万円=466万円となります。
また、技術職である旋盤工の年収は、実務経験の長さや技術力に応じて異なってきます。実務経験を積んでより高度な技術を身につけたり、機械加工技能士の資格を取得したりすることで、平均以上の年収を狙える可能性もあるでしょう。
※参考資料/厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」
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旋盤工のキャリアパス
部品メーカーなどの工場に就職した場合、入社後の一定期間はサポート的な業務に就き、実務に必要な技術や知識を習得していきます。その後、実務経験を積みながら旋盤加工のスキルを磨くことで、より高度な加工業務や工程管理なども任せられるようになります。そして、旋盤加工の優れた技能を有する熟練技術者になれば、現場のキーパーソンとして活躍しながら、若手の育成や技能継承などに携わる機会も増えていくでしょう。
また、旋盤工として極めて高度な技術を習得すれば、独立起業して自社工場を持つことも可能です。その場合は、「特殊素材の旋盤加工が可能」「複雑形状の切削加工が得意」など、自身の武器や強みとなるスキルがあると、同業他社との差別化を図ることができるでしょう。
旋盤工のキャリアアップに有利となる資格
旋盤工の仕事に必須となる資格はありませんが、先述した機械加工技能士の資格を取得すれば、キャリアアップや転職の際にも有利となるでしょう。この資格は「工作機械による金属類の切削・研削加工に必要な技能」を証明する国家資格で、都道府県職業能力開発協会が実施する技能検定(学科試験と実技試験)に合格すると取得できます。
資格の等級は、上位から「特級」「1級」「2級」「3級」に分かれており、特級・1級・2級の受験には一定以上の実務経験が必要となります。一方で、3級の検定は実務経験がなくても受験可能なので、これから旋盤工を目指そうと考えている人は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
旋盤工になる方法は?
旋盤工になるためには、工業製品の部品メーカーや金型メーカーの工場に就職するのが一般的です。具体的な方法としては、機械系の高専や工業高校などで旋盤加工の基礎を学び、新卒で就職するパターンが多いようです。また、公共職業能力開発施設(職業能力開発校やポリテクセンターなど)での基礎実習を経て就職・転職する人もいます。
このように、旋盤加工を学んだ経験や基礎知識があれば、就職・転職する際に有利となりますが、まったくの未経験からでも旋盤工を目指すことは可能です。とくに、若手の技術者が不足している近年は、入社後の研修や教育体制を充実させ、未経験者の育成に力を入れている企業も増えています。その場合は、見習いとしてゼロからスタートし、旋盤加工に必要な知識や技術を現場で覚えていくことになります。
いずれにしても、一人前の旋盤工になるためには「モノづくりへの情熱」と「技術を向上させていく意欲」が欠かせません。もちろん、熟練技術者や職人と呼ばれるようになるまでには、多大な労力と時間を要しますが、まずは日々の実務を通して研鑽を重ね、自身のスキルを磨いていくことが重要といえるでしょう。
まとめ
今回は、旋盤加工に関する基礎知識とともに、旋盤工の仕事内容や求められるスキル、役立つ資格やキャリアパス、目指す方法について解説しました。
旋盤工が手掛ける部品は、スマートフォン・パソコンといった電子機器や、自動車、航空機、医療機器など幅広い分野の製品に使われ、日本の高品質なモノづくりと人々の生活を支えています。そうした点で、旋盤工は大きな手応えとやりがいを持って取り組める仕事であり、将来的にも安定した需要が見込める職種といえるでしょう。
もちろん、一人前の旋盤工になるまでには、日々研鑽を積んで高い技能を身につける必要があるため、目指すにはハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、コンピューター制御のNC旋盤が主流となった近年は、以前より仕事のスキルが身につけやすくなり、未経験から旋盤工を目指す若手の人材にも活躍のチャンスが広がっています。製造業の仕事やモノづくりに興味がある人、手に職を付けたいと考えている人は、旋盤工という選択肢もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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